田中ひかる編『アナキズムを読む <自由>を生きるためのブックガイド』皓星社、2021年に、ブロンテの一冊が紹介されています。シャーロット・ブロンテの小説『ジェイン・エア』です。西洋史が専門の山本明代さん(名古屋市立大学教員)が「秩序への反抗と自由を求める主人公の生き方を読む」という題で執筆しています(34ページから36ページ)。
ブロンテの専門家としては、最初、三姉妹の中で政治的に一番保守的で、今やフェミニストとしても妹のアンに劣るとみなされているシャーロットがアナキスト?と思ってしまいましたが、「(ジェイン・エアは)過酷な経験の中で権威に同調しないオートノミーを創り出す方法を身に付けた」という指摘や、ジェインと従姉妹たちとの水平的なシスターフッドと「連帯の声」という指摘にうなずきました。シャーロット・ブロンテがアナキストなのではなくて、ジェイン・エアがアナキストなのです。
見開き2ページの文章は要点が明快で、複数の読み方(フェミニズム、ポストコロニアリズム、階級)が可能である『ジェイン・エア』を、アナキズム的に読むとどうなるかがわかります。ゼミで取り上げたところ、ゼミ論文にうまく活かせた学生もいました。
本書の執筆陣には英文学研究者は入っていませんが、約50冊のブックガイドの中に『ジェイン・エア』が入った喜びを、ブロンテ・ファンの皆様と共有したく、ぜひお読み下さい。
大田美和
以上