2022/09/04

北村紗衣著『お嬢さんと嘘と男たちのデスロード ジェンダー・フェミニズム入門』の中でアン・ブロンテが取り上げられました

 シェイクスピア研究者でフェミニスト批評家である北村紗衣さんの著書『お嬢さんと嘘と男たちのデスロード ジェンダー・フェミニズム入門』文藝春秋、2022の中で、アン・ブロンテの小説『ワイルドフェル・ホールの住人』が取り上げられました。

章 結婚というタフなビジネスの第3節に「元祖DVリベンジもの『ワイルドフェル・ホールの住人』」という題で、『ワイルドフェル・ホールの住人』の描写が21世紀の映画や小説のパートナー間の虐待を先取りしているとして、紹介されています。「現代なら・・・ダメ男から解放されたヘレンには独身で生きていく道があるのかもしれないが、ヴィクトリア朝ではなかなかそうはいかない。ヘレンは妻をコントロールする力があまりなさそうな男と結婚することで幸せを得るのだ。これがヘレンの人生のリベンジである。」(同書193)という結論には、この小説のヘレンの再婚相手であるギルバート問題の処理に悩む読者は大いにうなずくのではないでしょうか。

同じ章の第4節は「結局は結婚する『ジェーン・エア』、ただし条件付きで」、第5節は「『嵐が丘』のクィア・ドリームズ」となっています。日本におけるブロンテ姉妹の紹介で、アン・ブロンテがシャーロットとエミリより前に置かれたのは、初めてではないでしょうか。これをきっかけにして、アン・ブロンテの読者が日本でも増えることを願っています。

大田美和